紫狐亭

ゆかりこていと読みます

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11回目

昨夜から非常に頭が痛いです。
風邪かな…_(:3 」∠)_すっかりアップしておくの忘れてました。
なんだか読んで下さっているよとメッセージいただいたりして、驚きです。
ありがとうございます@@;
あ、これちょっと変だ。って読み返して気付いても直してません!
変なままお楽しみクダサイ!(なんで
◆来訪者◆1


 久しぶりによく晴れて、夏の日差しが眩しいほどに照りつける夏の日だった。
 例のそろいの着物を着てきたミーヤが、村の子に見せびらかしたいのか、朝からやってきて、半ば無理矢理ハナにも着せると、引きずるように連れて行ってしまった。
 最近ハナはあまり、子供達とは遊びたがらない。
 ミーヤが苦手とかそういうことではなく、ツナコにくっついて刺繍を習ったり、麗牙と家のことをして、余り時間に笛や字を習ったりする方が楽しいようだ。
 春には異界に帰るであろう少女に、この世界の字を教えることに意味があるのかはわからない。
 それでもハナは、文字を読み解いたり、歌や演奏を覚えたりすることのほうを、楽しいと思うようだった。
 麗牙自身もそういう子供時代を過ごした覚えがあるので、ハナとは割と似たもの同士なのかも知れない。
 朝の涼しいうちに畑の世話や、家事を済ませてしまうと、しばらく夕方まではゆったりした時間が出来る。
 ハナがいないと、こんなにも暇なのかと、麗牙は居間の床に寝転んだ。
 日よけになるよう、縁側に葦簀(よしず)と簀の子を立てかけて、上に這わせた胡瓜が、いくつもの黄色い花を咲かせている。
 漬け物にしようか、そのまま味噌をつけて食べようか。
 欠けた茶碗と小石を利用して、二人で手作りした風鈴が、涼しげな音を響かせる。
 目を閉じると眠気がやってきて、麗牙は少しだけ眠る事にした。
「なんじゃ、おまいさん一人かい」
 唐突にすぐ近くで、聞き覚えのある老人の声がした。
「!?」
 麗牙は思わず飛び起きた。
 ハナが帰ってきたら飲ましてやろうと思っていた、井戸水で冷やした麦茶を、老人は勝手に湯飲みについで飲んでいた。
 楼蘭だった。
「な、え。ええ?」
 寝起きで頭がついていかず、麗牙は起き上がったものの、相手になんと言うべきか迷っていると、楼蘭はぐいっと茶を飲み干した。
「元気にしとるかと思ってな」
「は、はぁ」
「桃はでかけておるようじゃけども」
 きょろきょろと、楼蘭は周りを見渡した。
 そういえば月に一度は、町には来るのだという話を、最初にアカルに聞いていた。
 ただし抜き打ち状態なので、いざ捕まえようと思えば容易ではないとのことだ。
「まーずいぶんと気に入られておるようで、結構結構。せいぜいかわいがってやる事じゃ。花でも野菜でもなんでも、愛情かけにゃ育つ物も育たん。邪魔したな」
「あの、待って下さい!あの子はっ」
 麗牙が呼び止めても、楼蘭は足を止めることはなく・・・足というか、そこに今いたはずなのに、かき消えるように消えてしまった。
 呆気にとられて、眠気は何処かに吹っ飛んでしまった。
 訊きたい事は山ほどあるというのに。
 何をしにきたというのか、あの老人は・・・・こちらからは訪ねるなと言われているし、頼みのハナ本人は、この世界に来るまでの事を良く覚えていないという回答だった。
 一度、本人にも色々訊いてはみたのだ。
 ハナの年齢だとか、どこから来たのかだとかいうのを。
 歳に関しては、人の子の年齢に値するようなものがないという回答だったし、どこからに関しては「麗牙は、此処がどの世界というのがわかるの?」と問われ、逆に考え込むことになった。
 そう言われてしまうと、世界に名前がついているかという話になる。
 楼蘭は天界と言っていたが、果たして天界に住む者達が、そこを天界だと思っているかといえば謎である。
 麗牙の母達が住む、妖の里というのは確かに異界なのだが、この世界に寄り添うように、作られた異界であるからして、別世界というよりは作り上げられた異空間に過ぎなかった。
 麗牙は妙な疲れを覚えて机の上を見ると、楼蘭に勝手に飲まれてしまった麦茶は、結構な量が減っていた。それでもまだ二人が飲む分くらいはあるだろう。
「麗牙ー!」
 今度は庭の方から、アカルの声がする。
「あれ、アカルさん、こんな時間にどうしたんです?」
「んや!朝から釣りに行って来たから、お裾分けよ。見ろよこれ!でっかいイシモジ、煮付けにすると旨いんだぞ~」
 言いつつ、縁側からどかどかと上がり込んでくると、魚以外にも貝やらイカなどを並べ始めた。
 舟の上で捌いて、塩水でしっかり洗われてから届けられるので、調理は非常に楽である。
 イカと貝は、このまま干してしまえば、日持ちするからとのことだ。
「お、よく冷えてんな。もらうよ」
「あ、はい」
 机の上に並べてある湯飲みを取ると、アカルは自分でついでごくごくと麦茶を飲み干した。
 たまのような汗をかいて、この暑いさなか届けてくれたのかと思えば、本当にありがたい話だ。
「あ、そうだそうだ祭りの話はきいてるよな?」
「はい、ツナコさんから聞きました」
 毎年、夏には伽耶で紫摩で一番大きな祭があるのだそうで、ツナコたちからは一月も前から話をきいていた。
 今日、ハナが新しい着物を着るのを渋っていたのは祭に行く話が出ていて、きっとその時までとっておきたかったのだろう。
 何の祭かといえば、王家の神様の特別なお祭りだとかいう話で、麗牙も詳細は知らない。
 志摩の国は家ごとに祀っている神が違うというほど神様がいて、国全体では何百もの神を信仰している多神教の国だった。
 誰もが分け隔てなく、どこの家の神にも敬意を払い、手を合わせるような文化は、羽矢の国から来た麗牙には珍しくうつった。
「俺たちは祭の日は毎年、三日前くらいから親戚の家に泊めてもらってるんよ。だから家におらんからよ。なんかたらん物あったら、明日までにゆっとくれよ。市場の野菜売り場のおっちゃん。あれ、ツナコの一番上の兄貴なんだ~」
 言われてみれば、どことなく雰囲気が似ていた気がする。
「わかりました、いつもありがとうございます・・・・・・そうですね、少し小麦を買わせていただきたいかもです」
 夏場は日持ちしないのもあって、主食が麺類に偏るぶん粉物の減りが激しい。きちんとした倉のあるアカルの家のようには保存出来ないのだ。
 野菜なら茄子も胡瓜も、うまいこと育ってくれている。
「そかそか、そいじゃ明日までに用意しとくよ。うっし、俺もちょっと昼寝したいから、家戻るよ。あ、もういっぱいもらうな」
 アカルはもう一度麦茶をつぐと、ぐーっと飲み干して、席を立った。
 麗牙も縁側まで見送りに出ようと立ち上がる。
 アカルは草鞋をひっかけて、炎天下の中走って帰っていってしまった。
 ハナの分はあるだろうか・・・・・・温むといけないので、急須ごとまた水の中に戻す。
 どうせだし、次の茶でも煎れようと、湯を沸かす準備をしていると、今度は突然何の前触れもなしに、玄関の引き戸が開いた。
「ひぇ・・・!?」
 思わず悲鳴が漏れそうになって、そちらを見ると、色鮮やかな若竹色の上着が見えた。
「よっ」
 年の頃は麗牙とそう変わらないように見える、若い男だった。
 真っ白の髪と、紅玉のように輝く赤い瞳は、純血の妖・・・・・・・ただ、紫摩の基準なら妖と言うより神の使いとなりそうだ。
「ちょ、ちょっと、その髪とか、誰かに見られたらどうするんだよもう!入って!中!すぐ入って!」
 麗牙は大慌てでその相手の腕を掴むと、中に引き入れて戸口を閉める。玄関先から、のどかな田園の広がる周囲を見渡したが、幸い時間的に畑仕事をしている村人は誰も居ないようだ。
「お、おう」
「ハナが見たら怖がるといけないし、来るなら来るで、ちゃんと人に見えるような恰好で来てよ・・・」
 ほんのちょっと時間がずれていたら、アカルと鉢合わせていたところではないか。
「すまん・・・」
 登場早々、けちをつけられた彼は、困ったように頭を掻いた。
 彼の名は苑樹(えんじゅ)。
 夏に訪ねるという、至極適当な手紙を寄越したっきりになっていた麗牙の叔父だ。
 言われたとおり、大体人間に見えるような感じに、彼の容姿が変化した。
長く伸ばした黒髪をすべてなでつけ、後ろできっちりと三つ編みにした苑樹は、額には第三の目を現すとされる蓮の印の入れ墨が施されている。
羽矢の国では成人した男性の多くは、大抵額に入れ墨をしているのだ。
 ここは紫摩であるので、悪目立ちするに違いないが、ハナはともかくアカルたちにまで紹介することにでもなったら、麗牙が羽矢から来ているので、叔父が最初から紫摩になじんでいる方がおかしいだろう。
 そこらへんは彼なりに汲んでくれているようだ。
 その割には登場がひどかったけれど。
「で、お土産は?」
 昔なじみの苑樹の前では、普段は大人しい麗牙も少し態度が大きくなってしまう。
 厚かましいと思いつつ、手を頂戴の形にして前に差し出すと、苑樹がふくれ面になった。
「おまえ、まずはいらっしゃいの一言もないのかよ・・・・」
「いらっしゃい」
「・・・・・・・・・・・まぁいいけどさぁ、ほいこれ」
 手渡されたのは、手のひらにのるほどの茶壺だ。
 青磁に赤い花の描かれた、綺麗な壺は念入りに紐で縛られていた。
「なにこれ?」
「見ての通りお茶だけど」
「・・・・・・・・他は?」
 もっと腹に溜まるものはないのかと、暗に目で訴える麗牙に、苑樹は肩を竦めて苦笑した。
「蜂蜜を瓶ごと持ってきてやった。あとは先立つものでございますよ。ったくもう・・・」
 後は何か買うてやるという話のようだ。
 以前と違い、騙していたという事実もあって、苑樹の立場は若干弱い。
 と、いうよりは、叔父と甥らしい関係とも言える。
「あ、麦茶。もらっていい?」
「・・・・・・・駄目」
 今日は急な客人が立て続けにやってきて、冷えた茶はもうこれっきりだ。今から沸かしていたのでは、ハナが帰ってきた時に飲む分がない。
 少なくとも、久しぶりに顔を合わす叔父よりは、麗牙の中ではハナの分がないことのほうが重要であった。
「な、ちょ、ケチすぎやしないか・・・!?」
「熱いのなら煎れてやるよ?」
「どうせ一杯分しか残ってないじゃないか、よこせよ」
「これは駄目。っておい、あっ」
 力任せに苑樹がひっぱるものだから、水滴で濡れた急須が麗牙の指を滑る。
 カシャーンという音がして、・・・・・鉄器の急須だったから良かったものの、中身が全部床にぶちまけられてしまった。
 麦茶は土間の土にみるみる吸い込まれていく。
「ああああ・・・・!!何するんだよ苑樹っ」
「何って、お前、今のは事故だろ」
 二人がわぁわぁと言い合いをしていると、玄関の引き戸が開いた。
「麗牙、大丈夫!?すごい音したけど・・・」
 走って帰ってきたのか息を切らしたハナが、二人を見上げて挨拶も忘れて、目を丸くしながら身体が傾きそうなほど首を傾げた。
 夏らしく、後ろの高めの位置で一つにまとめたハナの癖のない髪は、すでにかなりの量がこぼれ落ちてきてしまって、首や頬に汗で張り付いていた。
「こんにちは・・・!君がおハナちゃん?」
 麗牙に襟首を掴まれたまま、苑樹がハナに向かってひらひらと手を振った。
「え、え、えっと・・・あの・・・・・・麗牙・・・麗牙さんと一緒に暮らさせてもらってる、ハナと言います!」
 ハナはハッとしたように、慌ててその場で頭を下げて挨拶をすると、もう一度二人を見比べてから、また首を傾げる。
 すごく、言いたいことはわかる。
「あ、俺は苑樹。麗牙の叔父さんだよ。よろしくね」
「わぁ、通りで・・・・・よく似てますね」
「だろぉ?」
「そんなに似てないよ・・・・」
 似ているのは百も承知でも、認めたくないことは誰しもあるものだ。
 麗牙は思わず横を向きながら、否定の言葉をはさむ。
「ううん。そっくり」
 そんな彼の気持ちに気付いてくれなかったハナが、駄目押しに笑顔で請け合う。
 苑樹は背も麗牙よりやや高く、体つきもやはり麗牙より逞しい。顔立ちも彼の方が精悍な雰囲気が強く、下手に似ているものだから、麗牙にとって苑樹の容姿は目の上のたんこぶのようなところがあった。
 簡単に言うと、苑樹のすべての要素を、少し線を細くして、僅かに女顔にすると麗牙になる――――――別に麗牙が女性的な容姿という訳ではないのだけど、比較対象があるとそんな風に見えてしまう。
 実の母親や父親より似てしまっているものだから、苑樹もなんだか麗牙に対しては、甥っ子というより兄弟や、下手をすれば息子に近いような親近感を抱いていた。
「はっはぁ・・・・・・これはこれは・・・・」
 苑樹はしげしげとハナを眺めると、三日月型に目を細めながら麗牙を振り返った。
「将来が楽しみですな」
「・・・・・・・・・」
 ハナの将来はともかく、似てると言われたくない最大の理由の一つに、彼の性癖があった。
 苑樹は・・・・・・無類の女好きの、女たらしなのである。
 家に遊びに来るたびに、近所中の女性を老若問わず、人妻まで口説いていくものだから、麗牙にとっては余り良い思い出がない。
 大半は別にただの挨拶程度ですんでいたのだけれども、少年時代なんて、初恋の女の子を目の前で口説かれるとかいう、非常に忘れられないような思い出もある。
「あ、綺麗な入れ物」
 ハナが目ざとく、苑樹の持ってきた茶壺見つけた。
「あ、それね。茶なんだけどさ、湯をかけるとぱーっっと色々出てくる奴」
 志摩の国にはない技術で、湯をかけると中から花やら、蜜などが溶け出して、甘い香りの茶が飲める。いわゆる工芸茶だ。
 色々ときいても、ハナは茶から色々出てくるというようなものを見たことがないので、不思議そうにしている。
 この家には硝子の急須といった洒落たものはないので、白い大皿に入れて後で見せてろうと麗牙は思う。
「やー最近郭(くるわ)で流行っててさ」
 けろっとした顔で少女の前でとんでもないことを言うので、麗牙は思わず彼の頭を一発殴った。
「郭・・・・」
前からわかっていたことであるが、ハナが普通の子供とは違う部分―――――知らないはずの単語でも、言葉の意味がわかってしまう。
 少女は幼い面を少しだけ赤くすると、愛想笑いを浮かべて困ったように麗牙の方を見た。
 やっぱり伝わってしまったようである。
「苑樹の馬鹿・・・」
 麗牙のほうが恥ずかしくなって、ため息をついた。



**************
今回はちょっと分けました。
分けても少しだけ長めですけど、次回はその分短いです。
さて、苑樹さんの登場。
ハナちゃん、ポニーテールの回!(絵なら)
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[ 2016/03/05 21:39 ] 「色良き花の枝をこぞみる」  | TB(-) | CM(0)
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Author:ひめむらさき
ブログでは紫子(ゆかりこ)だったんだけど、ちっとも読めないよね…読めないよね(´;ω;`)
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