紫狐亭

ゆかりこていと読みます

「色良き花のこぞみる」 4

近況的に喘息がぶり返してきて危険なかほりです・・・・・
やめてっ
やっとごはんおいしくなってきたのに!
また咳で疲れて食欲減退とか、わたし食べる事しか普段楽しみないのに!!!!


はて、しかし数年前の作品を 自分でも読みがてら貼ってるので、なんだか新鮮ですねぇ。
貼るときに読み返してる状態ではありますが_(:3 」∠)_
すごい読んで!みたいなことはないので、ほんと ご無理なさらず!
さんちゃんさんのはさ!
ほら!文章どんなのかくの!っていってたからさ!お知らせたけどさ!

では 読みたい人だけどうぞ~
◆桃◆


 中は見た目よりは、広いのだなという印象だった。
 干した薬草の匂いが充満した、薄暗い室内の光源は天窓だけのようで、所狭しと並べられた瓶や壺はすべて薬のようだ。
 低い天井まで続く棚のどれもが、書物や薬で埋まっている。
 居間と寝室のみの作りになっているのだろう。
 囲炉裏にはとろ火にかけられた鍋から、嗅いだことないような草のにおいが漂ってくる。
 土足で上がる形式の家らしく、土間部分に置かれた竈の番をするための椅子に座るよう勧められ、壊れそうな古い椅子に麗牙は腰掛けた。
 男性としては細いけれど、小柄なわけではないので、重みで壊れたらどうしようという不安がよぎる。
「これを飲むが良い」
 棚からいくつか丸薬を取り出した楼蘭は、欠けた湯飲みに白湯を入れたものと一緒に麗牙に差し出した。
「これは・・・?」
「桃を預けるのじゃ。そちに間違いがあってはならぬじゃろう?」
「はぁ・・・えっと・・・?」
「人を喰いたいと言っていたな?・・・・・妖の欲求を抑える薬じゃ」
「!」
 そんなものがあるのなら、仙人にならずしても、その薬の作り方だけ教えてもらえればいいのにというのが麗牙の顔に出たのか、楼蘭は喉の奥でくっくと笑う。
「嘘がつけぬ質のようじゃなぁ。生憎、仙人の作る薬は、仙人じゃないと作れないからして、お前には作れぬよ。儂とて、今の仙桃の効き目が過ぎれば、お前より先に死ぬじゃろうし」
 自分で作れなければ、遅かれ早かれ薬を供給してくれる仙人を他に探すしかなくなる。
 そも、仙人がこの世に何人いるかなど、麗牙にはわからなかった。
 麗牙は薬をしばらく眺めていたが、意を決したように口に含むと、ぬるんだ白湯で一気に流し込んだ。
 ぽぅっと酒を飲んだときのような、胃の熱さを感じる。
 それも一瞬の事で、何が起きたかわからない。
「知らない人に物をもらっても食べてはいけないと、教わらなかったのかお前は・・・」
 自分で薬を与えておいて、楼蘭は呆れたように麗牙を見た。
「え、嘘だったのですか・・・!?」
「嘘ではないけども、お前あんまり、素直なものだから・・・・・・・まぁいい。こっちに来るのじゃ」
 奥の寝室は土足ではないようで靴を脱ぎ、さらに小さな引き戸を頭を下げて麗牙はくぐった。
 通された寝室の、黒い古びた木の寝台の上に子供が一人、丸くなって眠っていた。
「これが桃じゃ」
 楼蘭が指し示した方向に、麗牙の思うような果物や花らしきものはどこにもなく、代わりにどう見ても人の子供とおぼしき幼子が眠っていた。
 羽矢の国に伝わる、古い言い伝えでは、確か仙人は仙桃を喰らうという。
「あの・・・・これを食べるんですか・・・?」
 恐る恐る麗牙が聞くと、楼蘭は首を傾げた。
「これが何に見える?」
「子供に見えます」
 丸くなって俯いているので顔は見えないけれど、どう見ても、五、六歳の幼子だった。
 伸び放題の黒髪と、単衣に細帯を結んだだけの、小さな子供。
「おまえ、こんないたいけな子供を喰おうと思うのか?」
「思いませんよ!」
「じゃろう?儂も思わん」
 意味がわからなくて、麗牙が言葉に窮していると、楼蘭は気にしないのかそのまま話を続けた。
「今朝、桃が墜ちてきてどうしようかと思っていたのじゃ。おまけに樹齢も足りてない。しかし一年も儂の手元ではちょっと育てられそうにないしのぅ・・・・・この桃に気に入られれば、そなたはなりたいものになれるであろうよ」
 どうやら、桃というのはこの子供のことであり、仙桃は伝説上の比喩であり、食べるものではないようだ。
「おまえが今日ここに来たのも、そういう巡り合わせなのかも知れぬと思ってな。どうじゃ、一年頑張って見ぬか?桃が認めれば、儂もお前を弟子にとってもいいと思う」
「あの。桃というのは、一体・・・?」
「じゃから、天界の桃だといっておるではないか」
「でもどう見ても、これは子供だし、育てるって・・・・あの」
「・・・・・・・心配せずとも儂は子供を喰う趣味などありはせんわ。どうなんじゃ?やるのか?やらないのか?」
 桃に気に入られれば弟子にとる・・・・・と楼蘭は繰り返した。
麗牙は眠る子供を見つめた。
 子供は嫌いではない。
 一年という、麗牙にとってはそう長くない時間、可能性があるというのならやるしかないだろう。
 おそらく桃は仙人になるための資格があるかどうかの、審判の役目を担っているのだと麗牙は理解した。
「やらせてもらいます・・・!」
 考える余地はなかった。


「これ、起きよ」
楼蘭が声をかけても子供はぴくりともしない。
楼蘭は渋い表情で麗牙を振り向くと、呼びかけるようにと言った。
「天の巡り合わせならお前が呼べば起きるかも知れん」
 既に楼蘭は何度も呼びかけた後のようで、彼には起こすことがかなわなかったようである。ここでこの子供が起きなければ、万事休すだ。
麗牙は緊張して、なんと呼びかけるか迷った末、月並みに「起きて・・・」と一言、蚊の鳴くような声で漏らした。
その途端、子供は今まで寝たふりでもしていたのかと疑いたくなるほど、あっさりと目を開いた。
そうして起き上がると、麗牙の方を迷うことなく見つめた。
 薄暗い室内でも仄白く輝くような、桜色の・・・・・それは美しい瞳をしている。
 胸のうちを見透かされているのではないかと、不安になるほど透き通る眼差しは、恐ろしいまでに澄んでいた。
 ただの子供に見えるなどと言ったのは失礼だったかも知れない。
 麗牙は息も出来ないほど心奪われ見守るうちに、幼子の瞳は色をひそめ、人の子のように黒く染まった。
「・・・・・・やはり巡り合わせか」
それを試す前に一年預かれと言ったくせに、楼蘭はつまらなさそうな顔をした。
「・・・・・・任せたぞ。あと、此処を訪ねることは許さん。儂が来いと言うまでは来るでない。心配せんでもさっきの薬なら、数年はもつ。村の生活はそうじゃ、アカルにでも頼め。これを渡せば、何くれなく世話を見てくれるじゃろうよ」
 そう言って楼蘭は麗牙に小瓶を投げてよこすと、さっさと子供を連れて家を出て行けと言うように背を向けた。
 桃と呼ばれた子供には、一瞥もくれない。
 彼はよほど子供嫌いかなにかで、手元に置くのがいやなのだろう。
 有無を言わせない背中はすべてを拒んで、話しかけられる雰囲気ではなくなっていた。
 幼子はぼんやりと麗牙を見つめているだけで、自分で動く気配がないので、麗牙は抱き上げてしまうと、楼蘭に一度頭を下げて庵を後にした。



「なんだその子供・・・・」
 浜辺で糸を垂らしていたアカルは、麗牙を見て開口一番にそう言った。
 当たり前だ。
「え、えっと、うん・・・・・・弟子にとってもらえるかも知れないんだけど、一年ほど子供を預かることになったんです・・・・・・」
 桃のやりとりの話をすると長くなるので、麗牙は細かい説明をすっ飛ばして結論だけ告げる。
「じーさんが、子供・・・一体なんで・・・・」
「それは私もわかりません・・・あ、それと、村で暮らすように言われたんですけど、これを渡せばアカルさんがどうにかしてくれるだろうって・・・なんですか?これ」
 瑠璃色の硝子瓶に入った、丸薬は百錠以上はありそうだ。
 アカルは麗牙の手からそれをひったくるように受け取ると、顔を赤くした。
「おい・・・これの効き目きいた・・・?」
「いえ私は何も・・・」
 きょとんとして首を傾げる麗牙の表情に嘘はない。
 アカルは安心したように小瓶を懐に入れると、麗牙の肩を軽く叩いた。
「よし!俺がなんとかしてやろう!ところでその子は喋らないとかなのか・・?」
 そういってアカルは、子供を覗き込み、しげしげと見つめた。
「こりゃー大人になったらべっぴんさんになるだろうなぁ。お嬢ちゃんいくつ?って、僕だったらごめんな」
 この年頃の子供は男も女も容姿だけでは、わかりづらい。
 子供は話しかけられて、アカルの方を見はしたものの、すぐに麗牙の首に腕を回すと、ぎゅっとしがみついて返事をしなかった。
「お嬢ちゃんだったか、それは失礼した」
「今のでわかるんですか・・・?」
「ん?だってよ、俺より色男がいいんだとさ」
「う、うーん?」
 そんな明確な意味があるとは思えなかったけれど、桃というからにはなんとなく少女を連想しないでもない。
「幸い今日はべた凪だから、ちびっ子の一人くらいなら増えても船は沈まんだろうし。帰るとすっかぁ」
 どこから持ってきたのか、アカルは魚の入った魚籠を持ち上げた。
 結局、子供は村に戻るまでの間、一言も喋らなかった。




村に着くと案内されたのは、アカルの家の斜め前にある、空き家だった。
「去年まではうちの爺ちゃんが生きてたもんで、こっちに婆ちゃんと二人で暮らしてたんだけどよ。今はほれ、俺たちと暮らしてっから、調度この家空いてるんだ。一年っていうなら、使ってくれよ。お代ももらってるしな」
 アカルが懐の辺りを撫でた。
 一体何の薬か知らないが、彼の様子から見て、聞かぬが花だろうと麗牙は適当に察しておいた。
「ちょっと前まで使ってたし、今も風は定期的に入れるようにしてるから、綺麗なもんだろ?流石に着るもんとかは大きさが違うから俺のは貸せないし、自分でどうにかしてもらわないとだけど、お嬢ちゃんのだったらうちの下の娘のお古があるだろうから、後で嫁にゆっとくよ」
 小柄な彼と、やや背の高い麗牙では三寸以上は違うので、丈が相当違ってきてしまう。
「ありがとうございます・・・!」
 麗牙自身、恥を忍んで妖の里を出るときにもらってきた金子がいくばかかあるので、明日にでも島の中心部で買い物をしてこようと思う。
「あと、庭広いし、畑でもやるといいよ。あーあと、斜め前の畑の野菜なら適当に食っても良いぞ。米は季節じゃないから分けるほどないんで、ほしけりゃ買い取っておくれ」
 十分だった。
 こんなに簡単に住むところと、食べていくめどがつくことに、麗牙は感謝の気持ちでいっぱいだった。
 丸薬のおかげか、空腹になっても胸が騒ぐような妖の食欲はわいてこない。
 おまけに今晩の食事だけは、引越祝いに何か運んでやると、アカルはさっき釣った魚のはいった籠を得意げに上げて、白い歯を覗かせた。



 時刻はすでに夕方にさしかかり、今夜の寝床だけはどうにかしなくてはならなかった。
 ほこりだらけでも、麗牙一人なら床でもどこでも眠れても、子供がいるのだ。
 日が沈みきる前に、一部屋の床だけでも拭き掃除をしてしまわなければならず、麗牙は忙しく井戸と家を行ったり来たりした。
 その様子を相変わらず、連れて来られた場所・・・土間にぼんやりと立ったまま、子供は麗牙の方を見つめている。
「えーっとチビちゃん、そんなところで立ってなくても座ってていいよ・・・?」
麗牙は子供に部屋に上がるように言ったつもりだったのだが、何を思ったのかそのまま、立っていたその場に座ってしまう。
「え、家にあがっていいよ・・・・?というかこっちおいで」
 入り口の引き戸の敷居の部分に、ちょっこりと正座している姿が座敷童のようで吹き出しそうになったが、一体どんな育ち方をしたのか不思議でならない。
 桃と呼ばれてはいたけれど、童子の姿をしているということは、此処まで育つまでの過程が何かあったはずだ。
 実際麗牙の言葉自体は理解しているようで、おいでといわれた後は、素直にそばまでやってきて、彼の前にぺたんと腰を下ろした。
「チビちゃんは、お名前はなんていうのかな」
 此処まで一言も喋っていないので、もしや喋れない可能性もある。
 幼子はゆるゆると首を振った。
「じゃあ、桃ちゃん?」
「・・・・・・・・ない」
 鈴を振るより儚げな、小さな声だった。
「ない・・・名前がないって事?」
 返事が返ってきたことに驚いて、麗牙は絞っていた雑巾を取り落とす。
 喋れないわけでも声が出ないわけでもないようで、子供はもう一度深く頷いた。
「どういう意味なんだろう。名前がないって。君はどこから来たんだろう・・・」
 天界の桃が何かの比喩であるにしても、相手はへたをすれば天界生物である。
 人間の世界のような理が通じないのかも知れない。
 麗牙自身、妖の里が身近に異界であるがゆえ、世界が一つではなく、人の世の理が通じない世界があることも知っていた。
「でも名前がないと此処で一年一緒に暮らすとなると、困ると思うんだよ。・・・・・・私がつけてもいいのかな・・・」
 こくりと、子供は頷いた。
「あれ、いいの?」
 あっさりともう一度子供は頷く。
「え、どうしよう、変でも怒らないでね・・・?いや、子供の名付け親って重大だからな・・・そんな簡単に・・・・・・」
 小さな手が延ばされ麗牙の袖を掴み、透き通る桜色の眼差しが彼を見上げた。
 あれは一時の幻ではなかったのだ。
 重たげなほど長い睫毛が瞬くたびに色を変える、花の色を映した瞳。
 春の花。
「花・・・・・花の色の瞳をしているね・・・・」
 我知らず、麗牙が子供らしい丸い頬に手を伸ばすと、その手にすり寄るように頭を預けてきた。
 甘えているようにも感じられるその仕草は、庇護を必要とする仔猫のようだった。
 しかし、これだけ真っ直ぐに見つめられると困ってしまう。
 麗牙は照れくさくなって、視線をそらしつつ、けれども名前は早急に必要だった。
「ハナ・・・・・ってどうかな。ハナちゃん・・・・気に入らなかったら」
 一年後改名してくれればと続けようとした麗牙に、「ハナ」はゆるりと首を振った。
「気に入った・・・?」
 相変わらず無表情ではあるものの、幼子ははっきりと頷いた。
 つけておいてなんなのだけど、麗牙は一つ確認しておくことにする。
「えーっと、ハナちゃんは・・・・・・・・・女の子だよね?」
 ハナはちらりと横目で麗牙を見上げた後、やはり深く頷くだけで、表情からは何も読み取れなかった。



*****************本編がなかなかはじまらないぞ。
やっとメインの幼女が登場しました。
次から!次こそは!まったり展開になるはずです!!!

今回はそこそこ一気に流し込んでみました。
こんくらいなら文字数はいるのかな?大丈夫みたい。
ただし、添削の類を一切してないので、誤字とかあってもご愛敬でお願いします(*´▽`*;)
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[ 2016/01/13 00:01 ] 「色良き花の枝をこぞみる」  | TB(-) | CM(2)
あー!私に知らせたのは不可抗力みたいに言われたー!(どう考えてもさんちゃんがしつこく言い寄ってきてただろ!いい加減にしろ!(セルフツッコミ))

メイン幼女ww
ところで仙果が幼子なのに桃と比喩されていたのは何か理由があるのか...今後それも明らかになるのか...
楼蘭の時はどうだったのか...気になりますね...
それにアカルにも何かありそう。
和風ファンタジーと聞いたけど道教ベースかな?

続き待ってますん!
[ 2016/01/16 16:19 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
さんちゃんさんへ

いやいやいやそういう意味じゃないですよ!
文章ってそれくらい なかなか人に読んでーなんて言えない物ですよねぇって話がしたかっただけですよ><

そうメインヒロインが幼女です✧
ファンタジーってびっくりするくらいロイヤルセレブリティなのが一般的だと思うけど
めっちゃ地味な庶民ファンタジーなので、すごい生活物語になります・・・。

道教というかなんだろう 麗牙の出身国がややチャイナベース風の和風(道教風味かも知れませんね)で
仙人さんはそもそも長い時代を生きてるので、何とも言えません。
で、島の方は八百万な考え方の古来日本風・・・そのへんはお祭りの時のエピソードとかに出てきます。
[ 2016/01/19 03:01 ] [ 編集 ]
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プロフィール

ひめむらさき

Author:ひめむらさき
ブログでは紫子(ゆかりこ)だったんだけど、ちっとも読めないよね…読めないよね(´;ω;`)
お絵かきするます。
motimotiponponpon@yahoo.co.jp 御用の方はこちらまで。
http://tinami.jp/c/58005 TINAMIも登録してみました。(2015/12)

pixiv(´¬`)↓